ショックを受けた話
『花組 大伴れいか 8月17日付けで退団』
8月17日。
・・・昨日ですか。
このあいだは若手が数人まとまって集合日退団をしたけれど、
「気がついたらもう退めちゃってた」
ってのは悲しい。
悲しむ余裕すら与えてもらえないのが悔しい。
なんともいえない存在感がツボだった。
なんともいえない声がツボだった。
ここぞというところで現れて、ニンマリさせてくれるベテランだった。
大伴れいかさんと北嶋麻実さんは、
宝塚の不思議な空気を凝縮したようだったな人たちだったのに。
もう2人ともいないんだな。
さて。
気を取り直して。
先日の博多座のこと。
生まれて初めて博多座へ、入って階段上がって、驚いた。
おばちゃん達が声をはりあげて
「ハーイ、おいしいお弁当はいかが!」
「幕の内はいかが!」
と売りまくっている。
弁当ばかりではない。
お茶とか。
扇子とか。
博多座グッズとか。
いや大劇場でも売ってるけれど、
狭い場所に店がぎゅうぎゅうひしめいてるこの雰囲気は、もはやデパ地下。
出張キャトルでは霧やん団扇とか売ってるし。
手作りドーナツはかなり美味しかったし。
噂に聞いてた『ヅカ弁』なるものが見つからなかったのは残念だったけど。
このおもしろさはもはやカルチャーショックの域だった。
もう一つ驚いたのは「客席へのご注意」。
係員さんが客席通路で注意事項を読み上げる。
前のめりにならない!
おしゃべりをしない!
などなど。
もちろんとても大事なことだが、1人2人ではなく大勢で、少しずつずらして言うもんだから
「ビニールの音なども響きますので」
「ビニールの音なども響きますので」
「ビニールの音なども響きますので」
「ビニールの音なども響きますので」
もはや輪唱。
注意事項のすばらしいコーラスに思わず聞き惚れてしう。
だけどお弁当売り場よりも輪唱よりも、
博多で一番びっくりしたのは、ショックを受けたのは、
・・・やっぱり書かんとこ。
人って怖い、ファンってコワイ、きっと私もその一人。
そういうことです。
みんないろいろ気ぃつけような!
博多座デビュー月組『ME AND MY GIRL』
1日だけでも行くんだと言ったら
「えええ! 九州に日帰りって何すんの?」
と同僚に問い詰められた。
「太宰府へ行って、ラーメン食べて、明太子買って、・・・ちょっとだけ宝塚観たりとか」
「宝塚なんてすぐそこで観れるがな!」
ものすごくつっこまれた。
・・・ええやん。
九州でも観たいねん、宝塚。
ファンってちょびっと恥ずかしい。
つっこまれつつも観にいったのは、月組『ME AND MY GIRL』。
みんなが言ってる。
みんなが書いてる。
私もやっぱり書いとこう。
「星条海斗がエライことになっている!」
もちろん、神の如き未沙のえる氏のような柔らかさや巧妙さはない。
そのぶんダイナミックに斬り込んだ。
歌って踊ってオーバーアクション、
エネルギッシュでアグレッシブ。
一つひとつにでっかい笑いを巻き起こす。
英語の発音がやたら良いのもこのひとらしいネタで、
ビルに「V」の発音練習をさせていた。
挙句、マリアに叱られる。
叱りつける声がだんだんデカくなってくる。
「パーチェスター・・・
パーチェスター・・・
パーチェスターーー!!!」
ビルよりよっぽど怒られている。
ビルの共犯者というより真犯人のようなパーちゃんに万歳三唱。
その怒れるマリア公爵夫人は京三紗さん。
正直、不思議なマリアさんだった。
「あたしのこと場違いだって思ってんだろ?」
というサリーの台詞を聞きながら、
「マリア夫人も同程度に場違いだな」
なんて思ってしまうくらいに。
第一、ドレスがあんまり似合ってない(ごめん、言うてもた)。
しかし!
似合ってないにもかかわらず。
京三紗マリア。
最高である。
最強である。
マリアの声は、時には少女のように甲高く、
時には怪談でも始まったかと思うほど低く、
揺らめきながら響いてくる。
「軍艦」というよりも、ヘアフォード家に現れたへっぴり腰の「怪人」だった。
ある意味、最高にツボをついてくる可愛い「マリアおばちゃん」かもしれない。
ちょっと疲れてきた。
手短に書いてもいいですか。
ジョン卿は桐生園加くん。
お茶目で愛くるしく、動きのキレイな麗しのジェントルマンだった。
ジェラルドが龍真咲くん。
わんぱく坊主がお姉さんジャッキーを追いかけまわしていた。
ロード・バターズビーは良基天音さん。
「あなたは私に冷たい・・・」
ぼそっと呟いて横を向く仕草が最高だった。
サリーは羽桜しずくちゃん。
懸命なサリー。
必死なサリー。
頑張れサリー!
応援したくなるサリーだった。
そして霧矢大夢さんのビル。
今までの「ビル」のイメージとはちょっと違った。
ちゃきちゃきに動きまわるビルではなかった。
おおらかで。
明るくて。
誠実で。
何よりも、あったかいビルだった。
「僕はそれがなんだか知ってますよ」
と『愛は世界をまわらせる』を歌いはじめるときの、少年のようにキラキラした瞳。
純粋なビルの深い懐だからこそ、サリーは帰っていけるのだ。
全体的にちょっと不思議な「ミーマイ」だった。
観たことのない「ミーマイ」だった。
だけど可愛いやつらだった。
本当に可愛かった・・・みんな、みんな、みんな!
あー、楽しかった。
やっぱりランベス最高だ
まるで初めての作品のよう。
こんなミーマイ観たことない!
博多まで来た甲斐ある。
…それにしてもここのドーナツ、旨いな。
雪組初日(2)『マリポーサの花』
お芝居はフィナーレ込み2時間に及ぶ長いものだった。
トイレはちゃんと行っておくように!
思い返せば4年前、アテネオリンピックの開会式の日も花組『ラ・エスペランサ』の初日とかぶっていた。
その日と同じ正塚晴彦氏で『マリポーサの花』。
実は
「マリポーサってどんな花だろう?」
とわくわくしながら観たのだが。
べつに薔薇でもチューリップでもヒマワリでもタマネギでも、
なんでもよさげな話であった。
・・・花の名前なぞどうでもいい!
とっても正塚晴彦だったのだ。
まわるまわるまわる盆、
モノトーンでシンプルなセット。
台詞は短く、説明がなく、
「ああ」
「うん」
「ええ」
「じゃ」
で会話が成立。
銃声、闘い、演説、「この国」、
アウトローな男と大人の女、
命をかけた男の友情、人間愛。
重くて暗くて、採算度外視。
客層、度外視。
リピーター無視。
俺は書きたいものを書く!
中途半端に逃げたり笑いに走ったりもせず、
どっしりしたテーマで突き刺してくる。
そして、こんな正塚作品に喰らいついていく雪組さんがまた熱い。
どんよりと重い物語が怒涛となって流れだす終盤、
あの・・・一つの場面へ向かって高まってゆく集中力!
そりゃ、かっこいいけども。
水さんも彩吹くんも、かっこいいけども。
かっこいいより・・・なんだろう。
くそ真面目に芝居に向かってゆく、なんか凄いもの観た気がしたんだ。
賛否は分かれるかもしれない。
開演から20分で
「かえりたい〜」
と子供が泣いた。
そら、泣くわ。
ぜんぜんお子様向きではない。
綺麗な衣装は出てこない。
日常の現実を忘れられる少女漫画みたいな癒しを求めたのに
なぜか新聞の海外政治欄が出てきたような作品だから。
実は私も、途中でちょっと泣きたかった。
でもね。
今まですっかり忘れてた。
私、ハリーが好きだった。
昔は正塚作品が大好きだった。
『テンダー・グリーン』に『ロマノフの宝石』、
『ブエノスアイレスの風』。
その頃を思いだすような作品だったと言っていい。
私の好きな正塚作品。
ものすごくマニアックだけど、
夏休みの大劇場にはどうかと思うけど、
実際リピートしろと言われたらちょっと唸るところはあるけれど、
いっそ爽快なくらいの正塚ワールドは、一見の価値アリだと思う。
雪組初日(1)『ソロモンの指輪』
休みだ!
「遊びにいこう!」
と、友達と連れ立って向かうのは。
海ではなく。
山でもなく。
プールでも墓参りでも田舎のおばあちゃん家でもなく、
いつもながらの宝塚大劇場。
「リゾートよりも本日開会式のオリンピックよりも、
雪組を選んで下さってありがとうございます」
と組長さんが言った。
2008年8月8日。
北京五輪より一足早く、雪組初日の幕があく。
今回は初めての試みで、はじめに30分だけのショーがあった。
あとの挨拶で
「やっている私達もあっという間でしたが、
お客様も何がなんだか分らないうちに終わってしまったかと思います」
と言う水夏希さんに、客席一同
「うん!」
と肯いた。
いや、何がなんだか分らなかったのは、30分という短さのせいではなく、
まさに荻田浩一ショーだからだろう。
『ソロモンの指輪』。
物憂げでけだるくてダークトーンな舞台。
彩那音ちゃんが迷子になってうろうろ歩き、
白羽ゆりちゃんが流し目で誘い、
凰稀かなめちゃんはペガサスみたいな尻尾をふりまわし、
彩吹真央さんと音月桂ちゃんと未来優希さんが歌いたおしていた。
オギーらしい香りがたっぷりの、流れるような30分。
何がなんだか分らないけど、ひとりポーズを決めて立つ、
水さんの美しさだけでもOKかもしれない。
長くなりそうなので分けて書きます。
芝居『マリポーサの花』については、この次に・・・今から開会式みますんで。すみません。




