駄らだらと語る宝塚ファンのブログ
駄らだら、たからづか。
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 「なんとなく花のみち日記」 2007年 05月 16日 (水) 00:20
天井桟敷のてっぺんの転がり落ちそうな格安B席。
彼方に輝く舞台を感じ、拍手の沸いた客席を感じ、広がる空間まで感じ。
劇場すべてを見下ろして。
夢の世界をふわふわ漂う。
そこが私の「いつもの場所」だ。

ところが今日は違ってた。
チケットの神様がおりてきた。
急転直下でおりてきた。
お金がないので悩んだけれど、断る勇気があるくらいなら、とっくにファンをやめている。

席が違えば角度が違う。
「いつもの場所」とは違う舞台に見えるくらいに。
劇場の空気を味わう空間もなければたくさんの観客の頭もない。
近い・・・とても近い。
ぐっと迫り出す銀橋に手を伸ばしたらとどきそう。
大音響が耳を射る。
スモークが流れて足がしんみり冷えていく。
何より舞台がとても大きい。
トートもシシィもフランツも、視野いっぱいにひろがって。
舞台だけしか見えなくなった。
舞台が世界のすべてになった。

そこからはいろんなものが・・・「いつもの場所」からは見えないものが見えるのだ。
ぶあつい緞帳の織り目ひとつが。
指揮者の横顔が。
振り上げられた白いタクトが。
ルキーニのぎらぎら光る白目が。
 「あの人のことを、そう、エリザベート!」
手鎖のぶち切れる音が聞こえる。

2回目にしてやっと観た。
綱渡りをしようと駆けていく少女シシィの軽やかな足取りを。
私は一人で飛べるのだと、すらりと伸びた強いうなじを。
涙をのみこんで歌う輝きを。
黒い扇をかざした向こうに固く結んだ唇を。
白羽エリザベートを、やっと観た。

強烈だったのは「ミルク」の場面。
顔を泥で汚し客席を睨みつけてくる民衆たち。
燃える瞳が、はちきれそうな拳が、目の前に突きつけられる。
歌声は噴きだす炎のようだ。
恐ろしいほどの怒りをこめて。
私はとても怖かった。

もっといろいろ書くことは、たくさんあるはずなのだけど。
結局トートばっかり観てた。
水トートには翼が生えてる。
音もなく踊りあがって背後から絡めとり、つかみとって、氷の刃で力強く切り込んでいく。
強くて黒い羽が生えてる。

一幕の終わり、エリザベートが光り輝く白のドレスで登場するとき、
トートはオケボックスから這い上がる。
地獄の底から湧き上がる。
爪をのばした細い指。
静かな銀髪と冷たい眼が浮かびあがって、死神はのそりと床に這う。
・・・ゾクゾクするほど水夏希。
幕が降りても痛いほど余韻が闇にたちこめて。
独り銀橋をたどるトートの、暗がりに隠された横顔と、硬い靴音だけが残っていた。

最後の緞帳が下りたとき、やおら隣のおばちゃんが
 「肩、こりましたねー!」
と言った。
 「疲れましたねー!」
うん。
一生懸命みすぎて疲れた。
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